無線機の種類とそれぞれの特徴・用途・価格相場を徹底解説
移動通信ネットワークは、大きく2種類に分けられます。1つが、携帯電話や自動車電話、PHS、無線呼び出しなどの電気通信事業用です。もう1つが、タクシー無線や警察無線、MCA無線、アマチュア無線などの自営通信用です。
業務用に無線を使いたい場合は、簡易無線局やMCA無線局、各種業務の無線局、特定小電力無線局などのシステムがあります。
当記事では、代表的な無線・無線機の種類について、分かりやすく解説します。
一般業務用無線機の特徴
業務用無線機は、企業や事業者などが業務上のコミュニケーションを行うために使用する無線機の総称です。
その中で、「一般業務用無線(一般業務用無線機)」とは、公共用と一般企業用の2つに大別される自営陸上移動通信の総称です。一般業務用無線は、最大送信出力が5Wから25Wの範囲に設定されており、通信距離は10km以上、場合によっては数十kmにわたって通信が可能です。
簡易無線局では、同一のチャンネルを多くの利用者で利用するので混信しやすいデメリットがありますが、一般業務用無線は、各事業者に専用の周波数が割り当てられます。そのため、ほかの事業者の通信と干渉することなく、安定した通信環境を確保できます。また専用周波数を使用することでセキュリティが高まり、事業の運営において重要な情報が外部に漏れるリスクを低減できます。
ただし、一般業務用無線を使うためには、無線局の開局手続きを行わなければなりません。また、使用の際には第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者資格の取得か、資格保有者の監督が必要です。
一般業務用無線機の用途・価格
一般業務用無線の主な用途は、以下の表の通りです。レジャー用としては利用できず、公共事業および一般企業で使われています。
公共用 | 電気、ガス、上下水道、鉄道・バス事業、道路管理、消防などの生活に密着した事業 |
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一般企業用 | 運送事業、タクシー事業、各種製造販売事業、金融機関、警備事業、新聞事業、サービス業など |
一般業務用無線機の価格相場としては、携帯型なら約5万円〜、車載型であれば1台あたり約15万円〜となっています。
デジタル簡易無線機の特徴
デジタル簡易無線は、簡易無線局の種類の1つです。簡易無線局とは、無線従事者資格が不要かつ、人命や財産に影響しない簡易な業務や個人的用務を目的とした無線局です。
簡易無線局にはアナログ方式とデジタル方式がありますが、350MHzおよび400MHz帯のアナログ方式の周波数は2024年12月1日以降は使用できなくなります。
出典:総務省 電波利用ホームページ「簡易無線局のデジタル化について」
デジタル簡易無線には、免許局(150MHz帯・400MHz帯)と、登録局(350MHz帯)の2種類があります。出力(空中線電力)は免許局で5W、登録局で5Wもしくは1Wです。
出典:総務省|中国総合通信局「簡易無線局(デジタル/アナログ)」
また、通信距離は約1〜4kmとなります。
利用にあたっては、免許局の場合は利用する1局ごとに電子または書面での免許申請手続きが必要です。
出典:総務省|中国総合通信局「簡易無線局(CR)免許 手続き」
登録局の場合は個別登録と包括登録があります。個別登録の場合は登録申請が必要で、登録状が交付されたら完了です。包括登録の場合は登録申請をし、登録状が交付されたのち、開設届を提出する必要があります。
出典:総務省|中国総合通信局「簡易無線局(デジタル CR)登録 手続き」
なお、レントシーバーのようなレンタル業者を利用して無線機を使う場合は、ユーザーは利用申し込みをするだけでよく、上記のような手続きは不要です。
デジタル簡易無線機の用途・価格
デジタル簡易無線は、免許局・登録局ともに、官民、業種、規模を問わず、業務連絡用として使用できます。ただし、電気通信事業用、船舶・航空用、鉄道・バス用、防災用、天変地異や非常事態の警備・消防用などには使えません。
また、免許局では業務以外の使用はできませんが、登録局の場合は個人のレジャー用として、学園祭、学校行事、登山、ツーリング、キャンプなどにも使用できます。
デジタル簡易無線機の価格相場は約2万〜5万円です。レントシーバーであれば、1日2,800円〜で、レンタル可能となっています。
デジタルMCA無線機の特徴
デジタルMCA無線(MCA無線)は、複数のユーザーが共同で使用するチャンネルを持つ中継局を通じて、周波数を効率的に利用する通信方式です。MCA無線では、従来個々のユーザーが設置していた基地局を1か所に集約し、1つの周波数を複数のユーザーが共有する形をとり、周波数の使用効率を向上しています。公共性が高いシステムであるため、公益法人(一般財団法人移動無線センター)が管理運営を行っています。
1つの中継局の通信距離は、約20〜40kmです。デジタルMCA無線を使用する場合は、届出および免許申請が必要となります。また、混線や通信回線の混雑が起こらない代わりに、およそ3〜5分を超えた通信は終了されます。
デジタルMCA無線機の用途・価格
デジタルMCA無線は、災害に強い無線として知られています。そのため、国や地方自治体の防災・危機管理用通信に使われています。また民間企業においても、物流業界やインフラ業界、医療業界、警備業界など、さまざまな分野で活用されています。
デジタルMCA無線機の価格相場は1台あたり10万〜20万円程度です。一般の利用者向けではないため、通常は店頭で販売されていません。
特定小電力トランシーバーの特徴
特定小電力無線局の特定小電力トランシーバーとは、届出や免許不要で使用できる、近距離で使用するタイプのトランシーバーです。出力は0.01Wまで、通信距離は約100〜200mとなっています。
デメリットとしては、通信距離が短いことや、建物や障害物が多い環境では通信が遮られやすいことが挙げられます。また同じ周波数帯を使用するほかのユーザーがいれば、混信が発生しやすい点もデメリットです。第三者に話を聞かれるリスクもあるため、セキュリティをそこまで重視しない簡易的な利用に向いています。
特定小電力トランシーバーの用途・価格
特定小電力トランシーバーは、ビジネス利用からレジャー利用までさまざまな場面で利用できます。
特定小電力トランシーバーの主な用途 |
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無線機を利用したいと考える場合には、導入のフローが一番簡単なタイプと言えるでしょう。軽量でコンパクトな機種が多く、使い勝手もよいのが特徴です。
価格相場は約1万〜2万円、安いものでは5,000円程度で購入可能です。レントシーバーなら1日1,500円〜で、レンタル可能となっています。
IP無線機の特徴
IP無線は、インターネットプロトコル(IP)を使用して無線通信を行うシステムです。国内の通信キャリアの回線を使用するため、それらのキャリアが提供している携帯電話の通信圏内なら通信可能で、広範囲にわたる通信ができる点が大きなメリットです。
同時通話が行えるので、双方向のコミュニケーションが行えます。また、使用に際して免許申請や各種登録申請なども不要です。
IP無線機では、音声をパケット化した上で、特定のIPアドレスに直接送信しています。そのため、混信や通信制限がほとんど起こらないのもメリットです。
IP無線機の用途・価格
IP無線の主な用途は以下の通りです。
IP無線機の主な用途 |
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IP無線機の価格相場は約8万〜20万円です。レントシーバーなら1日4,000円〜で、レンタル可能となっています。
まとめ
無線機には数多くの種類があり、一般業務用無線機・デジタル簡易無線機・デジタルMCA無線機・特定小電力トランシーバー・IP無線機などが代表的な無線機です。用途や通信距離、料金相場もそれぞれで異なります。
たとえば用途で言えば、一般業務用無線は公共性が高い用途に限られますが、特定小電力トランシーバーは個人利用も可能です。特に、特定小電力トランシーバーは無線機自体の価格も安く、免許も不要で、レンタル利用も頻繁に行われています。また、IP無線機は通信キャリアの回線を利用して通話するため通信範囲が広く、特定小電力トランシーバーと同様に免許や登録が不要と使いやすい特徴があります。