IPトランシーバーとは?メリット・デメリットも紹介
IPトランシーバーとは、携帯電話の通信網を使って音声を送受信する無線通信機のことです。携帯電話の電波が届く場所であれば、日本全国どこでも使えます。従来の無線よりも広い範囲で使えることから、多くの人が使用しているものです。
この記事では、IPトランシーバーの特徴やタイプ別の利用シーンについて詳しく解説します。さらに、IPトランシーバーのメリットやデメリット、価格相場についても取り上げるため、ぜひ参考にしてください。
IPトランシーバーとは?タイプ別の利用シーンも
IPトランシーバーとは、携帯電話会社の通信網を利用して、データ化した音声を送受信する無線通信機システムのことを指しています。携帯電話会社の通信回線が届く場所であれば、日本全国どこでも使用できるため、従来の無線機よりも通話エリアが広範囲に及びます。
無線機の中には、使用する上で免許が必要になるものもありますが、IPトランシーバーは免許が不要です。利用する際には免許の有無に関係なく、どなたでもすぐに使用できます。
個別通話だけではなくグループ通話もできるため、複数人での連携や情報共有が求められる下記業務などに最適です。
- 警備
- 倉庫・工場
- 建設・工事現場
- 病院
- イベント会場での運営管理
- トラック運送・タクシー
ここでは、IPトランシーバーの3つのタイプ、それぞれの特徴と最適な利用シーンを紹介します。
ハンディタイプ
ハンディタイプは小型かつ軽量のため、手で持ち歩けるIPトランシーバーです。携帯電話やスマートフォンのように移動しながら使用できる、汎用性の高いアイテムとなっています。
通信距離が限られる他のタイプの無線機に比べて、通信回線が届く場所であれば、数百キロ離れていても通話が可能です。また、耐久性が高く屋内外問わず使用できる機種も、多く揃っています。そのため、広い敷地を利用して開催される、野外フェスやマラソン大会などにも最適です。バッテリー駆動時間は機種により異なりますが、12~20時間を目安にしてください。
車載型
車載型IPトランシーバーは、ハンズフリーで使用できるタイプです。車の運転中でも手を使わずに使用できるため、安全に運転しつつ相互連絡が可能となります。
道路交通法により「ながら運転」にあたる行為は禁止されています。IPトランシーバーであっても、片手が塞がる状態で本体操作するハンディタイプなどは、違反とみなされるため注意してください。車載型であればハンズフリーで使用でき、規制の対象外となります。
車載型は、長時間の運転が予想される運送トラックや、多くの人を乗せて移動する高速バス、子どもの送迎バスなどに使用されるものです。なお、車の電源から電力を供給するため、充電せずに使用できます。
IP無線アプリ
IP無線アプリを利用すると、スマートフォンをIPトランシーバーのように使用できます。専用アプリをスマートフォンにダウンロードするだけで、ハンディタイプのIPトランシーバーと変わらない機能が得られる仕組みです。トランシーバー本体を購入せずに、スマートフォンとトランシーバーを持つ人との相互連絡・同時通話が可能になる、手軽な方法となっています。
なお、ハンディタイプと同じく、屋外イベントでの使用に適しています。ただし、駆動時間はスマートフォンのバッテリー次第となるため、注意が必要です。モバイルバッテリーを併用すると、充電切れを心配せずに安心して使用できます。
IPトランシーバーのメリット・デメリット
IPトランシーバーのメリット・デメリットを知っておくと、導入の検討材料として役立ちます。自身の使用環境に照らし合わせて、有効に活用できるか、また問題なく使用できるか判断してください。
3つのメリット
IPトランシーバーは、効率的かつ安定して無線通信できるアイテムです。他の無線機にはない、優れた特徴・強みとも言えるIPトランシーバーのメリットは、下記3つが挙げられます。
(1)エリアが広い
携帯電話会社の通信網を利用するため、遠距離でも通話できることがメリットの1つです。通信回線が届く範囲であれば、通話エリアは限定されません。
一方、従来の無線機はIPトランシーバーと違い、電波を直接無線機に飛ばして通信するため、通話できる距離が限られています。加えて、遮蔽物があるとスムーズな通話が困難になるので、広範囲で安定した通話環境を得たい人は、IPトランシーバーがおすすめです。
(2)免許が要らない
鉄道やバスなどの公共交通機関や警察・消防などで使用される一般業務用無線機などは、法令により免許が必要とされています。
IPトランシーバーは直接電波を飛ばして使用するわけではないため、免許が不要となっています。本体を用意したりIP無線アプリをダウンロードしたりして環境を整えれば、通信手段としてすぐに取り入れられます。
なお、無線機をレンタルする場合は、IPトランシーバーに限らず免許は必要とされません。
(3)混信しにくい
従来の無線機は、周波数のチャンネルを設定し、電波の送受信を行います。同じ周波数や近い周波数の電波が混じると通信が不安定になり、正常な通話が困難になる「混信」が起こりやすい仕組みです。また、混信により通話内容を他者に聞かれるリスクもあるため、情報漏洩が起こりかねません。
IPトランシーバーは、それぞれに割り振られたIPアドレスを利用してデータ化した音声を送受信するため、混信しにくくなっています。IPアドレスにより、音声を特定の相手にだけ届けられるので、セキュリティ対策としても有効です。
2つのデメリット
IPトランシーバーを使用するにあたって、注意すべきデメリットもあります。導入の際は、デメリットも把握した上で検討することが大切です。
(1)山奥だと繋がりにくい
通信回線が届かないような山奥では、圏外になる可能性があります。携帯電話やスマートフォンの通信・通話が困難になるのと同様に、IPトランシーバーでの通話も繋がりにくくなるため、注意が必要です。圏外になる山奥では、直接電波を飛ばして通信する無線機のほうが、安定した通話がしやすくなります。
(2)コストが高くなりやすい
IPトランシーバーを使用するには、まず本体を用意しなければなりません。加えて毎月の通信料も発生するため、コストが高くなりやすいデメリットがあります。契約の際には、通信料の支払いが継続して発生することを考慮してください。また、場所によって繋がりにくくなる可能性も含めて、どれだけのコストをかけて導入できるか、検討することがおすすめです。
IPトランシーバーの価格相場
IPトランシーバーは、購入もしくはレンタルにより導入可能です。どちらの導入方法を選ぶかにより負担するコストが大きく異なるため、使用頻度や期間、予算も考慮し、最適な導入方法を選んでください。
購入すると本体料金と毎月の通信料が発生する
購入する際は、本体価格と毎月の通信料の支払いが必要です。本体価格と通信料の詳細は、機種・利用する通信回線により異なりますが、下記が目安となります。
本体価格 | 約6万円から約12万円 |
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通信料 | 月額約2千円 |
通信料に関する契約は、定額プランでの契約が多い傾向にあります。携帯電話・スマートフォンの料金体系と同様のシステムと考えてください。なお、契約期間満了前に解約すると、違約金が発生する可能性があるため注意が必要です。
IPトランシーバーが複数台必要な場合は、本体価格と月々の通信料の負担が、それぞれその分大きくなります。決して安くはない初期費用と、ランニングコストの負担があることを理解しておきましょう。
レンタルなら手頃な料金で利用できる
レンタルを利用すると、導入コストを抑えられます。本体価格は発生せず、毎月の通信料も含めて1か月1万円程度が目安です。購入に比べてコストを抑えられるため、短期間の使用を検討している人にもおすすめとなっています。
また、レンタル会社のメニューによりますが、追加料金なく下記付属アイテムをセットで用意することも可能です。
- マイク
- イヤホン
- バッテリー
- ベルトクリップ
- 充電器
レンタルは、必要なときにだけ利用できるサービスです。不要になれば返却することで、道具の保管のために場所を確保する必要もありません。コストを抑えて効率的にIPトランシーバーを導入したい人は、レンタルがおすすめです。
まとめ
IPトランシーバーには、「エリアが広い」「免許が要らない」「混信しにくい」というメリットがあります。そのため、IPトランシーバーは、無線を必要とする人が選択しています。ただしIPトランシーバーには、いくつかのデメリットがある点に注意しなければなりません。特に、山奥で使用する場合は、IPトランシーバーが使えない場合があります。
IPトランシーバーのコスト面に不安を覚える場合は、レンタルがおすすめです。一時的な利用や一定期間に限られる利用の場合、レンタルは本体費用が発生しないため比較的軽いコストで済みます。お得にIPトランシーバーを使いたい場合は、レンタル製品の利用をご検討ください。