特定小電力トランシーバーは将来使えなくなる?理由や手続きを解説
現在、通信技術の発展や周波数の効率的な利用を目指す規制改正が進行中です。このなかで、旧スプリアス規格の特定小電力トランシーバーの利用に関する大きな変化が注目されています。
この記事では、旧スプリアス規格の特定小電力トランシーバーが使えなくなることについて、詳しく解説します。また、旧スプリアス規格の機器を見分ける方法や、特定小電力トランシーバーのメリットについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
旧スプリアス規格の特定小電力トランシーバーは使えなくなる
特定小電力トランシーバーの中でも「旧スプリアス規格」に該当する無線機は、将来的に使えなくなることが決まっています。スプリアスとは、不要な電波を意味する言葉です。所定の周波数を外れた電波を指しており、ほかの機器の電波障害となるため、スプリアス発射の強度は電波法により制限が設けられています。
スプリアス発射強度の許容値は、2005年の無線設備規制の改正により新たに定められた「新スプリアス規格」と、それ以前の「旧スプリアス規格」に分けられます。旧スプリアス規格を利用している人は、新スプリアス規格に該当する無線機への買い替えが必要です。
なお、旧スプリアス規格は使用期限が2022年11月30日と決められていました。しかし、新型コロナウイルス感染症による経済への影響や移行作業の遅延などを考慮して、使用期限は「当分の間」延長されています。
いずれ使用不可となることを念頭に置き、新スプリアス規格への移行が必要と覚えましょう。
旧スプリアス規格の機器が使えなくなる理由
旧スプリアス規格の無線機は、電波の利用環境の維持や向上を図ることを理由に使えなくなります。使用できる周波数には限界があり、効率よく利用しなくてはなりません。不要な電波の発生を可能な限り少なくし、ほかの機器への電波障害となる原因を減らすために、スプリアス発射強度の許容値に関する扱いが強化されます。
日本で旧スプリアス規格の無線機が使えなくなると決まったのは、世界無線通信会議で無線通信規則におけるスプリアスの発射強度の許容値が改正されたのがきっかけです。日本でも法令の改正が行われ、旧スプリアス規格の使用期限が設けられました。
旧スプリアス規格の機器を使い続けた場合の罰則
旧スプリアス規格の無線機を使用期限後も使い続けると、違法無線機の使用と見なされ電波法違反になる可能性があるため注意しましょう。下記は無線設備に関する電波法の抜粋です。
第三十八条 無線設備(放送の受信のみを目的とするものを除く。)は、この章に定めるものの外、総務省令で定める技術基準に適合するものでなければならない。
第百十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
十一 第三十八条の二十二第一項(第三十八条の二十九及び第三十八条の三十八において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反したとき。
十二 第三十八条の二十八第一項(第一号に係る部分に限る。)、第三十八条の三十六第一項(第一号に係る部分に限る。)又は第三十八条の三十七第一項の規定による禁止に違反したとき。
引用:e-gov 法令検索「電波法」引用日2024/2/9
電波法に違反すると判断された場合は1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金が課せられます。
期限後の使用が故意ではなかったとしても、違反と見なされる恐れがあります。知らぬ間に従業員同士で業務中などに使うことがないよう、新スプリアス規格への移行は早い段階から準備を進めるのがおすすめです。
2024年12月にはアナログ無線機も使用不可になる
アナログ無線機も、旧スプリアス規格の無線機と同じように使えなくなります。アナログ方式よりもデジタル方式のほうが、伝送速度や音質などの通信品質の面で優れており、効率的に使用できるためです。
使用期限は2024年11月30日と決まっているため、期日までにデジタル無線機に移行してください。期限後に誤って使用すると、電波法違反になる可能性があります。
アナログとデジタルの両方を使えるデュアル方式の無線機についても、アナログ方式は使用できないように改修する必要があると理解しておきましょう。
旧スプリアス規格の機器を見分ける方法
旧スプリアス規格の無線機は総務省のWebサイトを検索する、もしくは無線機の主要メーカーの公式HPなどから調べると見分けられます。
総務省のWebサイトでは、無線機に記載されている技適マークの「R」に続く番号を入力すると検索が可能です。
総務省 電波利用ホームページ | 技術基準適合証明等を受けた機器の検索
ほかにも、各無線機メーカーの公式HPを利用した調べ方は下記の通りです。
・八重洲無線
公式HPなどで旧スプリアス規格の見分け方を記載していないため、総務省Webサイトより検索してください。
・アイコム
無線機のシリアルナンバーシールによって見分けられます。「S」字のマークが記載されていれば、新スプリアス規格であると判断してください。
・アルインコ
公式HPにある総合FAQ「通信技術」から、旧スプリアス規格のリストを確認できます。表に記載されていない機種は新スプリアス規格に該当します。
出典:アルインコ「特定小電力トランシーバーの旧スプリアス規格対象品リスト」
・ケンウッド
公式HPに掲載されている一覧表より、旧スプリアス規格かどうか判断可能です。製品型番ごとでスプリアス規格の「旧・新」が記載されています。
出典:ケンウッド「旧スプリアス規格の製品について(コードレス電話機/FAX、特定小電力トランシーバーなど)」
手元の無線機が旧スプリアス規格か新スプリアス規格なのか判断できない場合は、メーカーや総務省に問い合わせるのがおすすめです。
旧スプリアス規格の無線機に必要な手続き
旧スプリアス規格の特定小電力トランシーバーを現在使用している場合は、廃棄して買い替える必要があります。
そのほかの無線機器、一例としてETC車載機などを使用している場合は、無線機本体の改修工事や手続きが必要です。
たとえば、新スプリアス規格に適合するフィルタを送信機出力端子と空中線との間に挿入する方法が挙げられます。工事にあたっては総合通信局へ変更申請の許可を得る必要があり、スプリアス測定後は工事完了届などの提出を行います。また、同じく変更申請が必要になりますが、新スプリアス規格として認められる無線機に買い替えるのも1つの方法です。
出典:総務省「無線機器のスプリアス規格の変更に伴い規格にあった無線機器の運用が必要です」
特定小電力トランシーバーをレンタルで使用すれば、使用者側が無線機の規格を意識したり廃棄する手間をかけたりする必要はありません。電波法違反も未然に防げるため、規格変更を意識するのが面倒に感じる場合は、レンタルを活用するとよいでしょう。
特定小電力トランシーバーとは
特定小電力トランシーバーとは、小電力無線局の電波を利用する無線機です。
送信出力が小さくトランシーバーの中でも通信距離が短いという特徴があります。ただし、比較的コンパクトなサイズかつ軽量で持ち運びしやすいため、短い距離での通信で問題ない場合は取り扱いがしやすい無線機です。
以下では、特定小電力トランシーバーのメリットとほかの無線機との違いを解説します。
特定小電力トランシーバーのメリット
特定小電力トランシーバーのメリットは、主に下記の3つが挙げられます。
・免許が不要
特定小電力トランシーバーは送信出力が小さく、ほかの機器の通信に影響を与えないとされています。そのため、免許取得や申請が不要です。業務で必要になった際に、申請手続きなどに時間を取られず導入できます。
・価格が安い機種が多い
送信出力が小さい分、本体にかかる部品コストが低いので、比較的価格が安い機種が多いメリットもあります。免許や申請が不要なため、電波利用料も発生しません。導入時から毎月の利用まで費用を抑えられます。
・タイムラグが発生しにくい
通信距離が短いため電波の送受信が早く、タイムラグが発生しにくいのもメリットです。スムーズな通信をしやすく、業務の作業効率向上が期待できます。
特定小電力トランシーバーは、免許不要や低コストといったメリットがあります。導入を検討しやすい上、さまざまな場面への活用ができる無線機です。
特定小電力トランシーバーとほかの無線機の違い
特定小電力トランシーバーとほかの無線機は、通信距離や本体の大きさ、費用の面などで違いがあります。
たとえば、業務用簡易無線機とIP無線機の違いはそれぞれ下記の通りです。
業務用簡易無線機 | 通信距離は1〜4kmが目安です。送信出力が大きく遮蔽物があっても通信しやすい特徴があります。ただし、パワーを要するため本体が大きく重い機種が多いほか、価格が高い傾向があります。 |
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IP無線機 | IP無線機とは、携帯電話の回線を利用して通信する無線機です。国内の携帯電話が通信可能な範囲内で無線を使用できます。電波利用料がかかる点や、国内の携帯キャリアが圏外になる地域では使用できない点には注意が必要です。 |
特定小電力トランシーバーの通信距離は、100〜200mを目安にしてください。上記の2つに比べると通信距離が短い無線機ですが、比較的コンパクトなサイズで持ち運びや保管時に邪魔になりにくい特徴があります。本体価格も抑えられるため、短い距離での通信に利用したい人にとっては導入を検討しやすい無線機です。
まとめ
特定小電力トランシーバーの「旧スプリアス規格」に該当する無線機は、将来的に使用できなくなります。スプリアス発射強度の許容値は新旧2種類あり、2005年の改正で新規格が定められました。旧規格は電波利用環境の向上を目指し、使用が制限されることになっています。使用制限を破ると電波法違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
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