トランシーバーに免許は必要?申請方法や免許不要なものについて解説
トランシーバーには、使用するために免許が必要なものと、必要でないものがあります。
免許とは何か、なぜ必要なのか、そしてどのような手続きが必要なのか、理由や具体的な方法までは知らないという方も多いでしょう。
当記事では、免許が必要なトランシーバーと不要なトランシーバーの違いと、免許の申請方法をくわしく解説します。
さらに、面倒な手続きはしたくないという方のために、トランシーバーをレンタルするメリットについてもご紹介しますので、トランシーバーの使用を検討している方はぜひ参考にしてください。
なお、当記事では「トランシーバー」と「無線局」「無線機」は同じものを指すものとしています。
トランシーバーに免許・登録は必要?
トランシーバーを使用するためには、免許が必要です。なぜなら電波法、電波の有効かつ適正な利用のために法律で定められているためです。
無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。ただし、次に掲げる無線局については、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索「電波法」/引用日2023/10/16
「無線局を開設」は「トランシーバーを使い始める」と同じ意味で、トランシーバーを使用するためには総務大臣の免許を受ける必要があります。したがって、トランシーバーは免許が必要ということになります。
ただし、中には免許不要のトランシーバーもあります。以下では、免許が必要なケースと不要なケースを紹介します。
免許が必要なトランシーバー
原則として、トランシーバーを使うためには免許が必要です。
免許が必要なトランシーバーの中で、一般的に数多く使われているのが簡易業務用無線です。
●簡易(業務用)無線
簡易無線は、無線従事者資格が不要で、簡易(人命や財産に影響する通信は除く)な業務または個人的用務を使用目的とする無線局です。そのため、幅広い業務・用途で使うことができます。
簡易無線の周波数帯はVHFの150MHz帯、とUHFの350MHz帯、400MHz帯です。従来、通信方式はアナログのみでしたが、電波の有効利用のためにデジタル化が進められ、現在はアナログ、デジタルの2方式が存在します。
デジタル式の簡易業務用無線機をデジタル簡易、その中で150MHz帯と400MHz帯のものが免許局、350MHz帯が登録局です。
本来、簡易無線はレンタル不可でしたが、2008年の法改正によりレンタル可能なデジタル簡易無線の登録局ができました。免許局と登録局の大きな違いは、レンタルが可能かどうかという点です。また免許局は免許を受ける必要がありますが、登録局は比較的簡単ではあるものの登録が必要です。
周波数帯 | ch | 出力 | 免許(登録) | 資格 | レンタル | |||
簡易業務用 | アナログ | VHF 150MHz帯 | 9ch | 5W | 必要 | 不要 | 不可 | |
UHF 400MHz帯 | 35ch | 必要 新規免許取得不能 | ||||||
UHF 350MHz帯 | 18ch | 1W | ||||||
デジタル | VHF 150MHz帯 | 28ch | 5W | 免許局 | 必要 | |||
VHF 400MHz帯 | 65ch | |||||||
UHF 350MHz帯 | 30ch | 登録局 | ||||||
5ch | 1W | 必要(登録) | 可 | |||||
一般業務用 | (略) | 必要 | 必要 | 不可 |
なお、簡易無線のデジタル化期限が2023年11月30日のため、400MHz帯と350MHz帯のアナログ簡易無線は2024年12月1日以降使用できなくなります。
出典:総務省 電波利用ホームページ「簡易無線局のデジタル化について」
●一般業務用無線
業務用無線機とは、さまざまな業種に使われる自営陸上移動通信用の無線機を指し、公共用と一般企業用に大別できます。
公共用の業務用無線機は、公共性の高い鉄道・バス事業や警察、消防など生活に密着した事業で利用されています。また一般企業用の業務用無線機が利用されるのは、運送やタクシーなどの幅広い業種の事業です。
こちらは業種用途が限定されるため、簡易な業務やレジャーでは免許を受けることはできず、使用もできません。
免許が不要なトランシーバー
トランシーバーを扱うには免許や登録が必要です。しかし、以下条件のいずれかに該当するトランシーバーは申請の必要はありません。
申請が不要となる条件 | 詳細 |
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電波が極めて弱いトランシーバーであること | 発射する電波が微弱な無線設備で、総務省令で定められたものです。例えば、模型などを無線で遠隔操縦するラジコン用発振器や、ワイヤレスマイクなどです。 |
市民ラジオのトランシーバーであること | 26.9MHzから27.2MHzまでの周波数帯の電波の中で、総務省令で定める電波の型式・周波数の電波を使うトランシーバーです。また、空中線電力が0.5W以下で、技術基準適合証明を受けた無線設備のみを使用する必要があります。 |
小電力で用途や運用が限られたトランシーバーであること | 以下の条件をすべて満たすものは申請が不要です。
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出典:総務省 電波利用ホームページ「免許及び登録を要しない無線局」
上記の他、トランシーバーにはIP無線機(IPトランシーバー)もありますが、こちらは事業者が包括免許を取得しているため、利用者側に免許は不要で利用申し込みだけで使用可能です。
免許が必要なトランシーバーを使用する2つの方法
トランシーバーを使うためには開局のための手続きが必要です。使用するトランシーバーによって免許手続きと登録手続きの2つの方法があります。ここでは免許局と登録局の開設手続きについて、それぞれの方法と特徴を解説します。
免許局を開設する(免許申請手続きの流れ)
免許申請手続きの流れは下図のとおりです。
一般業務用無線と簡易業務用無線では、免許申請手続きの流れが異なります。
申請書類を提出、審査後免許が下りて運用へと進むのはどちらも同じですが、一般業務用無線で必要な予備免許と落成検査の手続きが簡易無線局の場合は簡易な手続きとして省略され、以下のような流れになります。
【簡易用無線局の場合】
1. 申請書類などを提出する |
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総務省が管轄する全国11か所の総合通信局に、申請書類や必要な添付資料を郵送か電子申請で提出します。 |
2. 申請書類の審査が行われる |
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各総合通信局で、提出した申請書類が審査されます。 |
3. 免許状が交付される |
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審査後、不備などがなければ免許状が交付されます。簡易無線の免許は基本的に有効期間が5年となっているため、5年後も継続して使用する場合は更新(再免許)が必要です。 |
免許局のメリットは、チャンネル数の多さや通話品質の高さ、キャリアセンスを搭載していないなど、業務使用に適した機能が充実している点です。
一方で、機器費用が比較的高く、増設(買い足し)や更新の際に費用がかかる点、なによりレンタルが認められていないため、急な増設ができない点がデメリットです。
登録局を開設する(登録申請手続きの流れ)
登録申請には個別登録と包括登録があります。トランシーバーを1台ずつ登録する場合は個別登録、トランシーバー2台以上を使用する場合は包括登録を行うのが一般的です。
登録申請の方法は以下のとおりです。
1. 申請書類などを提出する |
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個別登録の場合、無線設備の設置場所を管轄する総合通信局または沖縄総合通信事務所に、申請書類や必要な添付書類を郵送または電子申請で提出します。 包括登録の場合は、申請者の住所を管轄する総合通信局または沖縄総合通信事務所に申請書と開設目的などを記載した添付書類を提出します。開設届は開設届に記載する常置場所を管轄する総合通信局へ申請書類を提出します。 |
2. 申請書類の審査が行われる |
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各総合通信局または沖縄総合通信事務所で、提出した申請書類の審査が実施されます。 審査をして電波法令に適合した場合、以下の情報が登録されます。
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3. 登録後、登録状が交付される |
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審査の結果、電波法令に適合していると判断されれば登録が受けられます。無線局の落成検査はありません。登録後は登録状が交付されます。 包括登録の場合は、無線局の開設日から15日以内に届出が必要です。 |
包括登録の場合、無線設備の設置場所や使用する無線設備の工事設計などについては、無線局の開設後に届出をします。
登録申請のメリットは、包括登録が可能な点です。
免許局は必ず使⽤前に1局ずつ免許を受けなければならず、急に必要になった場合対応が難しいのが難点です。登録局であれば、包括登録さえしていれば開設届は使⽤開始後でも良いため、急に必要になった場合でも、使用開始後15日以内に開設届を提出することで手続きが完了します。開設届も郵送で済むという手軽さもあります。
とはいえ、手続きは簡単でも登録にかかる費用は必要です。登録局を所有して使う場合は、機器購入費用がある程度まとまって必要になります。
トランシーバーはレンタルがおすすめ!レンタルのメリット
トランシーバーを使いたいとき、登録局であれば免許がなくてもハイパワー、出力の高いデジタル簡易無線を利用することができます。
気軽にトランシーバーを使いたい場合は、トランシーバーをレンタルするのもおすすめです。ここからは、トランシーバーをレンタルするメリットを紹介します。
面倒な手続きが不要
簡易無線最⼤出⼒5Wのトランシーバーを、初期費⽤や⼿続きの⼿間なしに必要な時必要なだけ利用できる点がレンタルのメリットです。
免許局は申請書類の作成が難しく、手続きに手間も費用もかかります。
一方で登録局は書類に必要事項を記入して郵送という流れで手続きを済ませられるため、比較的簡単に手続きができます。ただし、登録までには時間がかかるため、日数に余裕をもって手続きをすることがポイントです。
レンタルなら、申し込みするだけですぐに登録済みのトランシーバーを使うことができます。
使用コストが低い
トランシーバーを購入する場合は初期費用や維持・管理コストが必要であり、故障の際には修理費も発生します。
トランシーバーのレンタルであれば、レンタル料しかかかりません。レジャーのときだけ、などトランシーバーの使用頻度が高くない場合は、レンタルのほうが使用コストを抑えられます。
まとめ
トランシーバーには免許や登録が必要なものと不要なものがあります。免許が必要なトランシーバーには、簡易無線機と業務用無線機の2種類があり、それぞれ異なる特徴があります。規定の条件を満たすものとIPトランシーバーは免許不要で使用できます。
免許が必要なトランシーバーを使用するには、免許局を開設する方法と登録局を開設する方法があります。簡易無線の場合は予備免許と落成検査の手続きが不要です。
トランシーバーの免許手続きが難しい初心者や手続きや維持のコストを抑えたい方は、レンタルするのがおすすめです。